・・・・・・平成21年05月・・・・・・
草山」
  草山の草の中からきいていると いろんなたのしい声がする。
  「きょうで七日も雨ふらぬ のどがかわいた水ほしい」
  それはお山の黒い土。
  「空にきれいな雲がある お手てひろげてつかもうか」
  それはちいさなわらびの子。
  「お日さんよぶからのぞこうか」
  「わたしもわたしも、ついてゆく」
  ぐみの芽、しばの芽、ちがやの葉 いろんなはしゃいだ声がする。

  今から100年ほど前に生まれ、26歳で死んだ詩人 金子みすずさんの「草山」という詩です。
  花の好きな人は、毎日花と対話をしています。鳥の好きな人は、鳥と話しができます。動物を愛する人は、動物の話がわかります。山の好きな人は、山がよく解ります。金子みすずさんは草山の中で、土やワラビや草木のいろんな声を聞いたんだと思います。土は七日も雨が降らないからのどが渇いたと言っているし、ワラビの子供のあの雲をつかもうと言って手を広げている声が聴こえる。お日さまが呼ぶから行こうと言って、いっせいに芽を吹く草や木々の声を聴いていたのでしょう。こんなふうに、自然の中に身を置いて、ものの声を聴きとめることは大切なことだと思います。
  私の住む那須にはたくさんの人たちが自然を求め訪れます。その中には、せっかくの自然を求めて訪れているのに、車の窓は閉め切って、車の中で大音量で音楽を聴いているドライバーがいます。自然を楽しみに訪れたのでしょうから、その中をドライブする時は、少し窓を開けて風の匂いを感じ、音量を絞って自然の声に耳傾けたいものです。自然の中にはたくさんの声があり、あらゆるものが私たちに語りかけていてくれます。自然の中ではあらゆるものが声で、声でないものはありません。あらゆるものが、私たちに語りかけていてくれています。聴く耳を持ちさえすれば、自然はよき相談相手となってくれるでしょう。

  「峯のいろ 渓の響きも みなながら わが釈迦牟尼の 声をすがたと 道元禅師

合掌


来月も予定しています。光泰九拝
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