霜月になり、朝夕の冷え込みが厳しくなってきました。
裏山の木々も葉を落とし、冬に備えています。後二ヶ月でこの一年も終わります。でも、まだ二ヶ月もあるのです。しっかりと自分の足元を見つめて生活したいものです。
さて、10月法話の結びに 「主人公」 と云う語を示しましたが、この言葉について少し学んでみたいと思います。
無門和尚の示された『無門関』第十二則に「瑞巌主人公」の説があります。
「瑞巌の師彦(しげん)和尚、毎日自ら主人公と喚び、復た自ら応諾す」
瑞巌寺の師彦和尚は、毎日自分で自分に向かって、「おい主人公の師彦よ」と呼びかけ、自分で自分に「はい」と返事を繰り返していたそうです。「おい主人公よ、顔を洗ったか」、「はい」、「おい朝ごはんは食べたか」、「はい、食べました」。日々、自問自答を繰り返して生活していたそうです。
「主人公」とは映画や演劇の主役を演じている人物ではなく、あなた自身のことです。今、そこに生きているあなたが主人公なのです。
生きていると人は悩みや苦しみにぶつかります。そのとき周囲に相談したりして解決法を得ようとしますが、よくよく考えてみるとその苦しみや悩みの原因がすべて自分自身の中にあることに気がつきます。さらに掘り下げて考えてみると、本当の自分は何なのかということに突き当たります。人が迷いや妄想にとらわれてしまうのは、自分自身の中にある「主人公」を見失っているからです。
本来の自分自身である「主人公」に目覚めることが大切です。
悲しみも喜びもその原因は、外にあるのではありません。すべて自分自身の中にあるのです。
合掌 |
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